2020年12月27日

「saita」連載第6回 「同じものを食べるのは悪いこと?「ごはんは何にしよう」をいちど捨ててみることについて」



saitaの連載、第6回がアップされました。


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同じものを食べるのは悪いこと?「ごはんは何にしよう」をいちど捨ててみることについて

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サイトの都合で公開が遅れ、前回からずいぶんと間が空いてしまいました。
今後は年末にもう一本、1月からは月に2本のペースで公開されていく予定です。



年末年始で浮き立つ時期にアレなのですが。

日本は食べ物の種類が多すぎて、
それが私たちを苦しめているよねということについて書きました。


> 毎日のごはんって「何を作ろう?」「何を食べよう?」とそんなに頭を悩ませなきゃいけないことなのだろうか?

> ドイツ出身のマイケさんは「日本は食べ物の選択肢が多すぎて疲れる」とぼやいていた。ドイツでは晩にはパンとチーズ、ハムくらいしか基本的には食べないそうだから、そう思うのも無理もない。フランスに住む友人も言う。晩ごはんはサラダとスープで十分なのに、なんで日本は肉とか魚とか、やたらとごちそうを並べるの? そんな贅沢、別に毎日は必要ないのに。
>>


まだまだ下手だなあ、と自分で読み返して落ち込んだりもするのですが。
それでも。
これからもっと、食について生活について、
しっかり書いて発信していこうと決心した2020年の締めくくりの一本です。


よかったらぜひ読んでいただけると嬉しいです。


posted by しょうこ at 00:00| Comment(0) | __|- お仕事情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年12月26日

2020年のクリスマス〜子どもにレシピを伝えようと思ったら簡単メニューになった。



メリークリスマス!


ここ数年定番のクリスマスディナーです。


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 サーモンのマリネ  
 ローストビーフ
 アボカドのグリーンサラダ
 ローストチキン
  〜さつまいもグリル添え

 ピクルス、レバーペースト

 子ども製サンタケーキ

今年は笑ってしまうくらい、去年と同じです。

ちなみに去年のクリスマスがこちら →


子育ての終わりを意識するようになったここ数年、
イベントごはんはお決まりメニューを作るようにしています。
遠からず巣立つ子どもたちに「うちの味」として、はっきり記憶してもらいたいから。

「クリスマスには毎年あれが出たね!」

といつか思い出してもらえるのも
よいのではないかなと思ってます。 


何よりも、クリスマス何を作ろうかな、と考えなくてよい。
決まった買い物をして、決まったものを作るだけならば、かんたん。
「何を作ろうかな」と考える作業が、かなり負担なのだな、と
あらためて気づかされました。



去年は中2息子がもりもり働いて手伝ってくれましたが、
今年の働き手は高2娘。

わたしがローストビーフを仕込み、チキンの足を縛る横で
ケーキのスポンジ、サーモンマリネ、サラダを作ってくれました。


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今年もバタバタと、18時半すぎから一緒に調理スタート。

その時間からでも、簡単な料理を上手く並べれば
クリスマスごはんもそんなに大変ではないよ!
ということを体感してもらえれば嬉しい。

なので、ここ数年は、大変な手順のある料理はしていません。


ひとつひとつは実はかんたん。
ぶっちゃけ、焼くだけ、切るだけのものばかりです。

だけれど、塩加減とか、焼き加減とかは大切に。
その少しずつの大切を逃さないように作れば
あとは、葉っぱやハーブ類をわさっと飾れば楽しく仕上がる。
そんな体験を重ねてもらえればと思っています。



★★ 娘の作業 ★★

【スポンジケーキ】
卵泡立てる → 砂糖加えて泡立てる → 粉とバター加える → 型に入れて焼く

 → 焼き上がったらベランダで冷まし、ディナーのあとにみんなで飾り付け。
   毎年、スポンジとクリームがまったくなじまない、ほんとのできたてを食べてます。


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【サーモンマリネ】
薄く切って皿に並べる → オリーブオイルと塩ふる → レモンとピンクペッパー飾る → 冷蔵庫で冷やす

 → 「先に切って、器ごと冷蔵庫で冷やす」がポイント。


【グリーンサラダ】
レタスをちぎる → 水にはなす → サラダスピナーで水を切る → 器に盛る

 → 「水を吸わせてパリッとなってから、しっかり水を切る」がポイント。
   サラダスピナーがなければ、ふきんに包んでしっかりふる。

   あるフレンチのシェフは「親指の先の大きさにちぎるのがコツ」と
   本当に丁寧にレタスを繊細にちぎっていたのを思い出します。
   わたしはいっつも雑に大きくちぎってしまうのですが、
   今日は娘がわたしよりは小さい一口サイズに仕上げていました。
   こういう小さな作業に、働き手の数、あるいは下ごしらえの時間が如実に出ますね。



★★ わたしの作業 ★★

【ローストビーフ】
肉に塩こしょうすりこむ → フライパンで表面を焼く → 保温する(今回は湯を張った炊飯器で)


【ローストチキン】
表面にオリーブオイルと塩こしょうをすりこむ → お腹の中に塩こしょう、にんにく → 足を縛る → スポンジケーキが焼けたあとのオーブンで焼く。

 → 「お腹の中からもしっかり味をつける」がポイント。
  表面の味付けは、好みで。にんにくを加えるもよし、バターをのせて焼くもよし。
  
  わたし自身は、皮と身の間にハーブを挟みバターものせて焼くのが好きですが、

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  今年はその手間は省略。

  
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  わが家ではチキンをメインに出すため、チキンをまだオーブンで焼いている状態でサーモンなどで食事をスタートします。
 


おうちのクリスマスごはんは、ローストビーフが出たな、サーモンが出たな、と
家の味として思い出して欲しいし、
「よし、それを作ってみよう」
と将来、子どもだちが巣立ったあとに気軽に思うことができるくらいの
メニューになっているといいなと思っています。



来年のクリスマス料理の課題は、ローストチキンでしょうか。
オーブンさえあれば、入れて焼くだけ、の簡単料理ではありあますが
そのオーブンがないとどうにもならない。

オーブンがなくてもチキンが食べたい。
そんなときの参考になる、フライパンで作れるチキン料理にしてみようかな。





わたし自身は、
アメリカ在住の友人から「今年のクリスマス料理!」と送られてきた
『スターウォーズ』に出てくるジャバ・ザ・ハットみたいな
巨大なハムのほうが気になっているのですけれど。

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コストコで買ったハムを、メープルグレーズをかけながら3時間焼いたのですって。

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アメリカは11月末のサンクスギビングで七面鳥を焼いてしまうせいか
クリスマスには牛肉や豚肉料理のほうが多い印象です。


そんな記憶からか、
わたしはクリスマスはローストビーフにしたい。

が、息子はローストチキンが好きだし、何よりも
クリスマスにはローストチキンが出てくると信じている。

そのせめぎ合いで、わが家ではこの数年は、チキンとビーフの二段構えになっています。



以前は2キロも3キロもある大きなチキンを焼いて
翌日にはサンドイッチにして食べて、なんて楽しみ方をしていました。
が、チキンが大きいとその分、下ごしらえはたいへん。

ひっくり返すのにもいちいち
「よいしょ」
という感じで面倒だし、焼くのにも時間がかかる。
しっかり中まで美味しくするためには、事前に下味をつけておいたほうがよいし、
焼きながら出てくる肉汁も途中で回しかけながら焼きたい。

となると、かなりの大仕事になってしまいます。


が、数年前、試しにサイズの小さいチキンを買ってみたところ。

●下ごしらえは軽くてラク
●表面とお腹の中に塩こしょうをして焼くだけでも美味しい
●1時間弱で焼ける しかも焼きっぱなしでOK

ということに気づきました。


ローストビーフも同じ。
肉のサイズが小さければ調理もラク。もちろんリーズナブル。
チキンとビーフを両方並ぶとごちそう感が増して、みんなハッピー。

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見た目を華やかにしたい。
料理の手間は極力省きたい。
でも自分で作りたい。


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という観点で出来上がってる、うちのクリスマスメニュー。

結果的に、子どもに伝えるにもちょうどよい内容になっていたようです。




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2020年12月22日

カリフラワーのペペロンチーノでジミ弁



今日はお弁当持ちで古巣へ。

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毎年末に印刷会社さんから届くカレンダーを、
退社して10年も経つのに厚かましくいただいてます。

そのカレンダーをいただきがてらの懐かしい同僚とのランチも、
わたしの年末の恒例行事。

今年は広いテーブルで、ディスタンスな感じのお弁当会でした。

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「取引先からいただくカレンダーも、今年はずいぶん減ってしまった」
と言っていたけれど、印刷会社さんからは変わらずやって来たそう。
貴重な品をいただきました。

「わたしがもらっちゃっていいの?」

って、いちおう毎年聞くんですよ?
でも、ある年にはわたしが問い合わせるのが遅くて捨てられてしまったことがあって。
つまり、誰ももらわずに余ってるわけです。
もったいない!
印刷会社さんがお客さん向けに、超気合い入れて、
プロの技込めまくって印刷してるカレンダーなのに。
ちょちょいと印刷しているカレンダーではなく、
写真集クオリティの印刷をしているのだそうです。
それはどのくらいかというと、雑誌の印刷をするときの
解像度が約4倍といえば、わかりやすいでしょうか。
細かく、精度の高い印刷をしているのだそうです。

絵やオブジェも面白いものたくさん載ってるのになあ。
とはいえ。かくいう私も勤めてた当時には、
夫が「使う」というまでその良さにはあまり気づいてなかったのですけれど。
離れて初めてわかるありがたみってありますよね。


ある都市をテーマに、
その都市で飾られているアート作品が紹介されているカレンダーなのです。
2021年はベルリン。楽しみ!

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今日のお弁当。

昨日から
「人が作ったもん食べたい」
気分続行中のため、お弁当も買っちゃおうかな〜と迷ったけど、結局持参。


大地宅配のお惣菜 (←せめてもの「人が作ったもん」)
オレンジカリフラワーのペペロンチーノ
明太子入り卵焼き


【カリフラワーのペペロンチーノ】

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今日のお弁当のおかず。
普段はお弁当には生にんにく使ったものはあまり入れないけど、これは特別です。
美味しいんですもの。
最近はこうした地味な野菜おかずがしみます。


@カリフラワー(今回はオレンジ種)を小房に分ける。

Aフライパンにオリーブオイルを弱火で熱し、@を生のまま並べて
 塩をふって弱火でじんわりと、カリフラワーが汗をかくまで焼く。片面約2分。

B両面焼けたら、みじん切りにんにく、赤唐辛子を加えて香りをだす。


カリフラワーは焼くと水っぽくならず味がぐんと濃くなります。
ブロッコリーでも大好きな食べ方です。
今日は細切りベーコンも加えていますが、野菜だけでも最高に美味しい。
パスタの具に流用するのもおすすめです。
オリーブオイル味でも、クリーム味でも、トマトソース味でも。
しっかり塩味がついているので、
カリフラワーの味がぼんやりせず、くっきりと際立ちます、

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2020年12月18日

よく晴れたから、白菜を干そう。



今日は快晴!


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なので白菜を干してます。

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実は1株まるごと干すのは、生まれて初めてです。


これまでは、バタバタしている生活のなか、晴れ間を狙って干す心のゆとりがありませんでした。

白菜はいつも、ざっくりと切って塩揉みに。

「浅漬けとして十分美味しいし、忙しい生活ならこれで上出来!」

と思ってきたし、実際に、その塩揉み白菜をサラダにしたりスープにしたり、幸せに暮らしてきたわけですが。

(そんな塩揉みを活用したレモンレシピ、POKKAのサイトでご紹介しています。

https://www.with-lemon.jp/gourmet/062/

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ついに重い腰を上げて白菜を干す決心をしたのは、キムチのせいです。

一大韓流ブームがやってきた田内家の2020年。


春夏には大久保の大好きなお店からキムチを5キロの大量パックで取り寄せていたのですが、そのお店で売ってる「キムチの素」が気になって買ってしまったのです。

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ちょっと余ってる大根やニラなどでキムチができればいいな〜なんて軽い気持ちだったのですが。

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キムチの素がある以上は、白菜でも作ってみたい。

家にある白菜をさっと塩揉みにして、水気を絞ってそのキムチの素で簡易キムチを何度か作ってみたのですが、どうにも、納得の行く味にならないのです。お店で売ってるキムチと、基本の味付けは同じだと書いてあるのに。


となると、問題は白菜の扱い方なはず。

漬け物の基本は、野菜を「干す」。

知ってます。大根だって、白菜だって、干してから漬けるってこと。
でも時間がないな〜とか、たくさん作っても保存場所がないな〜とか、いろいろに言い訳してこれまで着手せずに来たのですが。

塩揉みだと水を切っても水っぽさが抜けないし、白菜の旨味が思っているように出てこない。そんなに簡単に家で再現できるものではないって、もちろんわかってます。だからプロの味にお金を払うわけで。

でも、そのプロの味をより「すごい!」と深く感謝できるように、その手間や味わいの意味や秘密をひとつでも多く知りたい、と思ってしまうのです。



大好きなCSの番組「韓国人の食卓」で

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「輸入塩で漬けるとキムチの歯触りが出ない。やっぱり韓国産の塩じゃないと」

と言っていました。


干すだけではなく、その後の塩も重要なのか。

日本海の塩ならば、韓国の塩に質は限りなく近そうです。
よし、白菜を干しさえすれば塩は大丈夫。
そんなことまでやりだしたら、結局、漬けダレの材料を揃えて自分でやったほうがいいじゃん、という話になりそうですが……。

幸い、うちにはアミの塩辛も粉唐辛子も数種類あります。
韓国の魚醤も。

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これらを使った本気の自家製キムチは後日試すとして、とりあえず、干した白菜で作ったらキムチの味にどれだけ差が出るのか、を知るために、今回は手持ちのキムチの素で作ってみようと思います。


一日干したあと、いまは塩をふって下漬け中です。

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続きはまた、ご報告しますね〜。


わたしがこんなにもキムチが好きな理由、韓流ブームのずっと前、実はわたしの祖母、おばあちゃんにあるのです。
その話はまた後日。


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2020年12月15日

無愛想なトマト麻婆を思い出しながら、鶏肉の辛トマト炒めを作ってみました。



【鶏肉とブロッコリーの辛トマト炒め】


20年くらい前、原宿駅前にカウンター10席くらいの小さな中華屋がありました。
当時いた編集部の先輩に連れていってもらったのが最初だと思うのだけど、夫もこのお店のことはよく覚えてるから、もしかすると夫とも行ってたのでしょうか。


狭いカウンターのなか、中国人兄妹で中華鍋と蒸籠ひとつずつを使ってテキパキどんどん料理を作るのですが、そんな仕事をカウンターごしに眺めるのも楽しみでした。

ただ、二人、本当に愛想がない。

「水餃子お願いします」

と注文しても、ちらりとこちらを見るだけ。

ちゃんと聞こえなかったのかなと思いきや、おもむろに餃子の皮を伸ばして包んでゆでたりし始めるといった調子なのですが、とにかく出てくるものはすべて美味しかった! 
いまでもときどき思い出すほどです。


特に好きだったのがトマト麻婆。

味が美味しかったのももちろんのこと、このメニューが店主の気が向かないと作ってもらえないスーパーレアメニューだったため「次こそは食べたい!」という執着の気持ちが残ってしまっている、片思いの一品なのです。



初めて先輩に連れていってもらった日。

「トマト麻婆ってあってさ、すごい美味しいんだけど、
 出てくるか出てこないか、頼んでみないとわかんないんだよね」

へえ、それはすごい! 
すぐ売り切れちゃう人気メニューなのか。

なんて想像している横で先輩がさっそく注文しました。

「次は、トマト麻婆お願いします」

しーん。返事はまったくなし。
「はい」でも「今日は売り切れです」でもない。
水餃子のときと違って、こちらをちらりとも見ません。聞こえてないのかな? 


「もういちど言ったほうがいいんじゃ……?」とお店の人に聞こえないように囁くわたしに、先輩は「いいのいいの」と囁き返してくるではありませんか。

よくわかんないけど、仕方ない、ここはこういう店なんだろう。きっと今日はないよ、ということなんだろうと納得することにしました。

すごく美味しいのか。
食べてみたかったな。

未練がましく思いながらも、でもないのならば仕方ない。

そのうちトマト麻婆のことはほとんど忘れて、その日の仕事の話などいろいろしゃべっていたところ。



ドン! 

とつぜん、赤いペースト状の料理が、目の前に置かれました。


「お、やった! 今日はついてる」

と先輩は嬉しそうに、そそくさと私の分までよそって「はい」と渡してくれるではありませんか。出てくるか出てこないか、頼んでみないとわからないってこういう意味だったのか……。わたしの想像を遥かに超えた、この店独自のルールに戸惑いながらも、ひと口食べたとたん、そんなことはすべて吹っ飛びました。

なんじゃこりゃ!
美味しすぎる!!

一見ふつうの麻婆豆腐。
柔らかい絹ごし豆腐が細かくつぶされ、全体が豆腐のような肉のようなペースト状になっています。

でも小さいトマトの皮がちりじりに混じっているから、トマトを刻んで煮詰めているのだということはわかる。トマトの酸味はまったくなく、トマトと聞かなければ何かわからない人もいるかもしれない、ただのうまみとなって麻婆の味と渾然一体となっています。

ピリッときいた豆板醤が煮詰めたトマトの優しい甘みをまた引き立てていて。びっくりするほど辛いなかに、トマトのほんのりとした甘味と香りが、麻婆の味を立体的に複雑にしつつ、ふくよかに包み込んでいます。明らかに普通の麻婆豆腐とは違う、どこでも食べたことのない初めての味。一口食べたとたんにとりこになりました。


帰宅した後にも「あのトマト麻婆が食べたい!」と何度も思い出し、再現して作ったりもしてみましたが、やっぱりあのお店のが食べたい。食べたい。食べたい。

何日間も思い続け、翌週にさっそく食べ物好きの友人を誘って来訪し「トマト麻婆お願いします」と頼んでみたところ。
当然のようにその注文は無視され、残念ながら、最後まで出てきませんでした。

わたしがほとんど一見の客だからいけなかったんだろうか……。
そもそも、よく知らない客がトマト麻婆を頼むなんておこがましいことだったんだろうか。

食べたさのあまり卑屈な発想も出てきます。

と同時に、そこまでのトマト麻婆、どれだけスペシャルなのか。ますます憧れの気持ちも高まります。

もちろん、トマト麻婆を食べるためならば、ここから先、顔を覚えてもらえるくらいには通う覚悟だけれど、でもいつになるかわからないその日まで待てない! 

最初に連れて行ってくれた先輩に頼みこみ、一緒に行ってもらい

「トマト麻婆ください」

と再び注文しましたが、その日も結局、最後までトマト麻婆が出されることはありませんでした。
はあ。


「トマト麻婆ってさ、出てくるか出てこないか、頼んでみないとわかんないんだよね」

最初のときとほぼ同じセリフを先輩は繰り返しながら「もう今日はトマト麻婆は出ないよ。諦めて最後の一杯にしよう」と決めて頼んだビールの最後の一口を飲み干したのでした。



その後も諦めきれずに10回以上は行ったかと思いますが、「トマト麻婆お願いします」の注文には変わらず無言のまま。ときには出され、ときにはやはり出されないまま諦めてお勘定をし。トマト麻婆を食べられたのは結局、たぶん3〜4回だったでしょうか。

やがて編集部の仕事も離れ、下の子も生まれ、ますます外食に行く機会も減っていき、ついにそのままお店とはお別れしてしまったものだから、トマト麻婆の思い出は美しくなるばかりなのです。

思慕のあまり、拙著『汁かけごはん』では、わたしなりのトマト麻婆を再現しています。
これもとても美味しいので、ぜひ作ってみてくださいね。

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それにしても、あのたまにしか出てこない「トマト麻婆」とは何だったのか。

出してくれない日にはトマトの仕入れがなかったのか、ほかのオーダーが忙しくて作りたくなかったのか、わたしみたいに「食べたい!」とやみつき客を増やすためのまさかの策略だったのか。
あるいは、日本語がそんなに得意でなかったからきちんと返事をしなかっただけなのかもしれません。

今となっては、いろいろにも理由は想像できますが、当時はあまりの美味しさと、クセになる無愛想さに惹かれ、ただただ足が向かってしまったあのお店。
いまもあるのかなあ、とときどき気になっています。
もしもあるのなら、コロナ禍を無事に生き延びてほしいなあ、と思いますが、結局いまどうなっているのか調べもしていないのだから、無責任な思い出話ですね。


そんな思い出から、トマトと豆板醤を合わせた味は今もたまに無性に食べたくなります。


今日作った、鶏肉とブロッコリーの辛トマト炒めも、
ちょっとトマト麻婆に似た味。美味しいので、ぜひ作ってみてくださいね。

器の底に残ったトマトと香味野菜のところをごはんにのっけて食べると、これまた震えるほど美味しいのです。
最初から丼にしても、きっと美味しいことと思います。






【鶏肉とブロッコリーの辛トマト炒め】 


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1 鶏もも350gに塩こしょう酒適量をもみ込み薄力粉大1〜2をまぶす。


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2 油大2で両面を焼き、生ブロッコリー適量も焦げ目がつくまで焼く。

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3 ねぎ生姜にんにくのみじん切り適量と豆板醤小1を加える。

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4 香りが立ったら、トマト粗みじん2個分と醤油大1/2を加えて炒め合わせ、水分が半量になるまでじっくり煮詰める。

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posted by しょうこ at 00:00| Comment(0) | __|- 食のはなし | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする