9月29日(火)と30日(水)の二日間、
フィンランドの老舗カフェ「エクベリ」の特別料理教室で
通訳としてお手伝いをさせていただきました。
フィンランド語なんて、もちろんできないのですが
ヨーロッパの方々は本当に英語が上手で、
今回も英語で授業をしてくださり、その通訳を。
日頃、通訳などまったくしていないので、さすがに荷が重く迷ったのですが
フィンランド大使館に勤める友人が推薦してくれたことと、
英語がわかるというより、料理がわかる人のほうがよい、
という主催の方からの強いご希望をいただき
頑張って行って参りました。
何よりも、フィンランド料理を作るところを身近に見たい!
という興味のほうが勝りまして。
二日間は、とにかく楽しかった!
ひさしぶりにヨーロッパの空気に触れたのも楽しかったし、
思いもよらない料理法や、おおらかな作り方を近くで見られて
いろいろな発見がありました。
見せていただいたフィンランドのお料理をいくつか。
いちばん衝撃的だったのはこれ。
カラクッコ(Kalakukko)というお料理。
イーストやふくらし粉を入れずに作る固めのライ麦粉の生地で
フィリングをがっちり包んでオーブンで計2時間半ほど焼きます。
フィンランドといえば、森や湖がたくさんある国、というイメージですが
その昔、森に入ったり湖で釣りをしたりする冬に
携行食として作られたものなのだそうです。
しっかりと体を温めてくれる、栄養たっぷりな一品。
どう栄養たっぷりかというと。
材料は、たっぷりのワカサギと豚ラード。
これを層にして重ねて塩をふり、
がっちりと釜状に生地で包んで、じっくりと包み焼きにするのです。
ワカサギによく似た小型の淡水魚で作るのが一般的だそうです。
焼き上がったらスライスし、さらにバターをつけて食べるのだとか!
さすが寒い国の栄養食です。
ちなみに、中身はワカサギのほか、肉類でもジャガイモでも野菜でも。
なんでもOKなのだそうです。
もう一品は、やはり伝統的な家庭料理。
リーキとポテトのタルト。
今回は、日本でも作れるよう、玉ねぎと長ネギで作ってくださいました。
カフェ・ベーカリー「エクベリ Ekberg」は創業163年。
北欧三国でもいちばんの老舗です。
そのベーカリーのトップシェフ、セルゲイさん。フィンランドのシナモンロールには、カルダモンがたっぷり。
余ったら翌日、パンプディングにします。
ざっくりとちぎって生地を並べ、
間にラズベリージャムを挟んで上から卵液をかけて焼きます。
卵液は、もちろんカルダモン入り。
それを取りわけ、ホイップクリームを添えていただきます。
左はカフェの最高責任者のヤニさん。
入れ墨にヒゲの一見コワモテですが、細やかで素晴らしい技術を持ったシェフ。
元NokiaのCEOのプライベートシェフで、
海外からの政府要人のための晩餐まで仕切っていたという経歴の持ち主です。
ちなみに入れ墨の模様は
Varikallioにある古代壁画を再現したものだそうです。
ちょっと、というか、かなりかっこいい!
http://www.nationalparks.fi/varikallioこちらは、19世紀に活躍した国民的詩人ルーネベリが大好きだった、と伝わる
ルーネベリタルト。
2月のルーネベリの生誕記念日の時期にだけ食べられる
季節のお菓子なのだそうです。
ヤニさんによると、ルーネベリはこのお菓子を、
ブランデーのような強いお酒と一緒に朝ごはんに食べていた、と言われているのだとか。
フィンランドのソウルフードの素?!
ビールモルト。
これからパンも焼くし、これを一晩発酵させて作る
Katikaljaと呼ばれる自家製ホームビール(ノンアルコール)も
ランチと一緒によく飲むそうです。
エクベリの5代目オーナー、ドイツ出身のマーティンさんからは
カフェの歴史やフィンランドの地形、言葉などについての説明も。
珍しいお料理やお菓子をいただき、フィンランドの話を聞き、
行ったこともないのに、気分はすっかりフィンランド。
サウナの話などを聞かせて頂くうち、
むかし働いていた雑誌「Pen」にあった
「北欧の男たち」みたいな特集を思い出しました。
男友だち数人で、湖畔のコテージで料理をし、食べ、飲み、
みんなでタオルを巻いてサウナに入り、
そのまま湖にばしゃーんと入りに行く、なんていうバカンスをただただ撮らせてもらった
初期の「Pen」らしい、のどかな特集のうちの数ページだったのですが、
そのスローで豊かな過ごしぶりがかっこよかったなあ、と。
今回お会いしたシェフたちも、やはり自然児、という感じで
少し時間が空くと
「外の空気を吸いにいっていい?」
とテラスに出て深呼吸。
日本と同じ国土の広さでありながら、人口が600万人しかいない、という
広い広いフィンランドの自然で育った方たちらしい
とてもおおらかでチャーミングなお二人でした。
フィンランドはいつかは行ってみたいなあ、と憧れていた国。
でもそれはもしかして永久に来ない「いつか」かも、とも思っていたのですが
今回の二日間で、その「いつか」はわたしの中で
ぐーんと近い、現実的な夢に変わりました。
二日間、いろいろなパンやタルトを見せていただきましたが
どれも
「肉を入れてもいいし、ベリーを入れてスイーツにしてもいいし、お好きなように!」
という気楽さ。
甘めのパン生地をタルトの皮にしてもいいし、ライ麦生地をスイーツにしてもいい。
古くからの知恵の詰まった、おおらかでふくよかな味は
2週前に見せていただいたマダムエイヤとも共通していたなあ、と。
それがフィンランドらしさなのでしょうね。
少し前、大使館でフィンランド食材をいろいろ見せていただき
お料理を試食させていただく機会がありましたが
クリーンで質のよい食材を活かした、ソリッドでありながら温かみのあるお料理、
というフィンランド料理への印象は、今回ますます強くなりました。
フィンランド、やっぱり行ってみたい!
頑張って働いて、3年以内にはフィンランドに行くぞー。