2010年
『プリンセスと魔法のキス』公開当時に
ディズニー.jp内にあった「FamilyTime(現在はサービス終了)」内
掲載された「ママの映画レビュー」です。
2009年、アメリカでは初の黒人大統領としてオバマ大統領が選出され、
その翌年、ディズニーから『プリンセスと魔法のキス』が登場しました。
プリンセス映画として初の実在の街を舞台にし、
自立する黒人プリンセスが活躍する映画。
昨年末の『アナと雪の女王』では、さらにヒロイン像が進化していましたが、
プリンスの登場を待たないプリンセス像として、
2010年当時、とても新鮮な思いでこの映画を見ました。
(アメリカの女子大で
「ディズニー映画がいかにジェンダーロールを少女に刷り込むか」
などというレポートを書かされていたので、
どうしても見方が女性学よりなのです・・・)
ほかのプリンセス映画に比べると、そんなに名前を知られてはいませんが
ジャズや歌の流れる小粋さと、
ヒロインの頑張りと。
子どもには、ぜひぜひ見せてあげたい映画です。
まだご覧になっていない方はぜひ!
『プリンセスと魔法のキス』は、
ディズニー映画には珍しく、食が前面に出てきた映画でもあります。
ニューオリンズの食と、歴史と、いろいろ書いたものが出てきたので、
それもまた、別エントリーで上げておきます。
映画を見たあとに、さらに楽しめますよ。
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待ちに待った、新しいプリンセス映画の登場です!
新しいプリンセスは本当に新しい、いままでいなかったようなプリンセスです。
『プリンセスと魔法のキス』の主人公、ティアナは本当に頑張りや。
お父さんの夢を継いでレストランを開くため、仕事をふたつかけもちし、
友だちの誘いも断って働きに働きまくっています。
「そんなのできっこない」という外野の声に傷つきながらも猪突猛進。
なんだか、いまどきのワーキングウーマンのようなのです。
そんなティアナが出会ったプリンスは、これまた、いままでにはいなかったプリンス。
遊び人で音楽が大好き。
なにひとつ、自分ではしたことがないぐうたら王子なのです。
あまりの放蕩ぶりに勘当されてしまい、
大金持ちの娘と結婚しようとニューオリンズにやってきます。
こんな王子がカエルに変身してしまったら、
人間に戻るためにはどうしたらよいの!?
ティアナとナヴィーン王子の旅が始まります。
ニューオリンズはルイジアナ州にある港街
(プリンセス映画で実在の街が舞台となるのは初めてなのでは?)。
フランス系移民が大きな綿花農場(プランテーション)を経営して発展した土地です。
その農場経営の裏には黒人奴隷の労働力があった、
というアメリカの暗い歴史を背負った街でもありますが、
ケイジャン料理、ジャズ、ブルースなどなどアフリカとの融合で生まれた文化には、
暗い歴史を補ってあまりある魅力があります。
映画でも、ガンボやベニエといったニューオリンズ独自の料理や
ジャズ、そしてヴードゥー教がエキゾチックに、畏敬をもって描かれています。
アメリカでも憧れをもって語られる特別な場所、
アメリカであってアメリカでないような街。
この街でなら、こんな魔法も起きるかも!
そんな雰囲気が映画中に散りばめられています。
わたしたち、ママにもぐっと来るメッセージもたくさん。
「食べものは、あらゆる人をひとつにする。
おいしい食べものは、ひとの心を温めて笑顔にするんだ。」
ティアナのお父さんの言葉です。
映画のはじめ、ニューオリンズの白人名士の豪邸から、
ティアナとお母さんがバスで移動しながら貧しい黒人街に帰っていきます。
ティアナのうちは貧しかったけれど、お父さんが作るおいしい料理を囲んで、
家族も近所のひともみんな幸せに温かく暮らしていた。
そして、そのお父さんから受け継いだティアナの料理の腕が、
ストーリーのカギとなっていきます。
ディズニー映画で、食べものの果たす役割がこれほどストレートに描かれているのも
初めて見た気がします。
これまで、常にファンタジーで希望を伝えてくれたディズニー映画ですが、
この『プリンセスと魔法のキス』の感動は格別!
手を伸ばせば、いまにも届きそうなファンタジーなのです。
ただ魔法を待つのではなくて、どうすれば奇跡を起こせるのかを、
具体的に考えて行動するティアナたちのリアルな姿には、
大人が見ても学ぶところはいっぱい!
これからを生きていく子どもたちには、ぜひぜひ見てもらいたい映画です。
シンデレラやオーロラ、白雪姫などは、
どちらかというとじっと待つプリンセスたちでした。
最近の『アラジン』や『美女と野獣』では、
「本当に大切なものを自分で探す」
というテーマに変わってきています。
それは愛だったり、人を信じることだったり。
そしてこの『プリンセスと魔法のキス』はその進化系であり集大成。
自分で考え、悩み、選び、自分の足で生きていくことの喜びや幸せに満ち溢れています。
その感動をよりリアルにしているのが、手描きのアニメーション。
ここ数年、CG一辺倒だったディズニーが伝統に立ち戻り、
手描きアニメーションを復活させているのです!
昔のディズニー映画を見ているような美しさと、立体的な質感。
そしてプリンセスストーリーではこれまでぼかしてきた(というと語弊があるかもしれませんが)
アメリカ史の暗部にまで踏み込んだ舞台設定。
ディズニーは、そしてアメリカは、いま変わっていこうとしているんだ、
ということがひしひしと伝わってきます。
ティアナの頑張りにワクワクして、
ナヴィーンのダメぶりにはティアナと一緒になって叱咤激励して。
はたして魔法は起こるのか、最後まで目が離せません。
ディズニー映画らしい素敵な仲間もいっぱい!
ワニのルイスや南部ホタルのレイの精いっぱい生きる姿にほろり、
ママ・オーディの大らかさにはにっこり。
世界って力強くて温かい! 素直にこんな気持ちになります。
6歳にして、すでにプリンセス映画を卒業してしまった?感のあるわが家の娘とも、
ぜひ観に行きたいと思います。
「魔法は自分でかなえるものなんだ!」って信じてほしいから。